年齢と共に人が聞こえる音域(但し、シングルトーン)は段々狭くなってきます。これに関しては訓練したりして頑張っても限界があります。『音の性質』ページには加齢による聴力の低下のデータが載っています。
しかし音楽家などはかなりの高齢でもそれなりに聞き分けてるのが不思議です。多分、音域とは違う感覚で音に関わってるのかもしれませんね。
音は空気の振動で伝わってきます。つまり空気の動きを忠実に再現できるシステムなら、例え音域が狭くなってきたとしても、ライブと同じ臨場感が味わえるのではないかと思う今日この頃です。
アンプはS/N、歪み率、周波数特性で評価しますが、これは静特性と言う性能である程度高性能になると後は余り気にしないでもいいかも。
気になるのはやっぱり音声が出る瞬間などの動特性です。負荷として純抵抗を繋いで測定した静特性がいくら良くても、純抵抗でないスピーカーを繋ぐと、スピーカーの構成によって動特性は静特性より悪化してしまいます。
MFB (Motion Feedback)
そこで、アンプとスピーカーの接続時に発生する歪み改善には、スピーカーの影響を考慮して動作するMFBとか言う技術がアナログアンプの全盛期には発達してきました。
しかし、従来のアナログアンプでは、フィードバックにより振幅特性を改善していましたが、位相特性まで改善することはできません
LAPC(Load Adaptive Phase Calibration)
⇒ SU-G700 (Technics)
Webページの写真より
スピーカーのインピーダンスは純抵抗と違って、一定ではなく周波数ごとに変化します。
この技術はスピーカーを接続した状態でアンプ出力の周波数振幅位相を測定し、デジタル信号処理により理想的なインパルス応答に補正するスピーカー負荷適応アルゴリズムで、いままでのアナログアンプでは実現できなかった振幅と位相の周波数特性の平坦化を可能にしています。
測定器のようにキャリブレーション機能があるなんて~~
以下マニュアルの抜粋によると
測定中のテスト音について
測定精度確保するために比較的大きなテスト音がスピーカーから間欠的に出力されます。(約3分) 測定中の音量は変えることはできません。
接続するスピーカーの種類によっては、出力補正機能の効果が少ない場合があります。
キャリブレに3分は時間がかかりすぎの気もしますが、それよりスピーカーの種類に性能は依存するって書いて無いのが問題かな。多分、ネットワークが 2ウェイや3ウェイなどのマルチウェイシステム等に内蔵されるネットワークがあるシステムは駄目なんでしょうね。
しかし、これでアンプとスピーカー接続時の性能悪化は改善できそうです。
Adaptive Speaker Driver (適応型スピーカードライバー)
⇒ ASD-A1 (Pleasantone Technology)
Webページの写真より
以下、ホームページからの抜粋によると
スピーカーの特性検出は、スピーカーに流れる電圧と電流から、振動系の質量、機械抵抗と拘束力、およびスピーカーケーブルを含めた電気系の抵抗とインダクタンスを検出します。測定用のマイクを用意したりするような面倒な手順は不要で、通常の鑑賞環境のままで行うことができます。スイッチ操作だけで検出動作が開始し、約10秒で完了します。
検出した値と入力信号波形をスピーカーの運動方程式に当てはめ、スピーカーに流すべき電流波形に変換し、さらに電圧波形に変換します。こうすることで、スピーカーの特性に合わせたスピーカーの振動板の制御が可能となり、入力信号波形通りの再生音圧波形をスピーカーから出力させることが可能となりました。
これは、スピーカー特性を検出し、その特性に合わせて最適化した信号でスピーカーをドライブします。そのため、スピーカーを信号波形通りに動かすことができます。
LAPCと同様にキャリブレーション機能がありますが、こちらは10秒、気楽にキャリブレできそうですね。
ASDとLAPCは見た目は同じような効果を狙っていますが、良く見ると違いがあります。LAPCは振幅と位相をフラットにするような信号処理のアルゴリズムを採用していますが、ASDはメカニカルに動くスピーカーの動作を補正するような信号処理のアルゴリズムを最初して、結果として振幅と位相の周波数特性がフラットになる制御方式です。
LAPC:周波数軸で理想的な特性
ASD:時間軸で理想的な特性→結果として周波数軸で理想的な特性
電気的特性を補正するのではなく、スピーカーの動き、つまり、人間に音として伝わる空気の流れを制御する新しい発想のデジタルアンプだと思います。
そのため、効果があるスピーカーをフルレンジスピーカーと指定しています。これはLAPCが効果があると期待しているスピーカーと同じだと思います。推奨のスピーカーシステムを指定してくるなんて普通の量産メーカーでは考えられません。
このアンプは受注生産(注文後30~60日)のアンプなので、実際の音を聞くにはお店に行くのではなくて直接会社にコンタクトを取って予約しないといけませんが...
LAPCもASDもデジタル信号処理が普及してきたからできるようになった技術です。従来なら諦めていた技術がデジタルになっていろいろ実現できるようになるとまた、新しいコンセプトの面白い製品が一杯、世の中にデビューしそうです。
どちらの製品もソフトウェアアップデートで、性能がこれからも更新できるのが嬉しいですよね~~。人それぞれ耳の感度は違うし、ユーザーごとの要望を聞いて個別にソフトウェア準備してくれたらワクワクそうなマニア向けの製品になりそう。