60歳以降で継続勤務する場合の手取り金額と年金

企業で継続して仕事をした場合に実際に手取り金額がどのくらいになるかの概略計算です。色々な条件があるので必ずしも正しい計算になっていないかもしれませんが大体の概略は把握できると思います。




計算式は

 毎月の手取り金額=[毎月の収入]-[毎月の支出]

以下の条件で計算してみましょう。

59歳時 誕生日は12月31日 配偶者控除あり
標準報酬月額 40万円(月給+各種手当)+1万円 (交通費)
年収     600万円(月給12ヶ月+賞与2回+手当等12ヶ月) 交通費は含まず

60歳~65歳未満 配偶者控除あり
標準報酬月額 20万円(月給+各種手当等)+1万円(交通費)
年収     240万円
特別支給の老齢厚生年金(開始時期は生年月日による)

標準報酬月額とは


基本給や通勤手当などの労務の対価として支払われるもの(報酬月額)をいくつかの等級に区分した仮の報酬額で、保険料や年金額の計算の基となるものですが、ここで単純に保険率で計算します。厚生年金、健康保険は毎年1回、4、5、6月の報酬の平均額を用いて決定します。標準報酬月額によって等級が決まって7月に決定した標準報酬月額は、1年間(9月~翌年8月まで)固定されます。

報酬には、賃金・給料・手当・通勤手当など労務の対償として受け取るものすべてが含まれます。
 基本給
 通勤手当(通勤手当はひと月あたりの額に直して計算)
 各種手当(残業手当、家族手当、住宅手当など)
年4回以上の賞与(一般の賞与は年2回)
 現物支給のものは金銭に換算して含む

実際の計算例


毎月の収入(以下の合計)
交通費:1万円
月給:20万円
in-1)高年齢雇用継続基本給付金:3.15万円=(20+1)×0.15
in-2)特別支給の老齢厚生年金:ここでは省略

毎月の支出(以下の合計)
交通費:1万円
out-1)雇用保険料:840円=(20+1)×0.004
out-2)介護保険料:1470円=(20+1)×0.007
out-3)厚生年金保険料:1.909万円=(20+1)×0.18182/2
out-4)健康保険料:1.21万円=(20+1)×0.1152/2
out-5)所得税:0.1048=33.8×0.05/12
    所得額 33.8=240-(240×0.3+18)-38-38-40.2
out-6)住民税1:1.496=179.5×0.1/12(定年後1年5ヶ月まで)
 所得額 600-(600×0.3+18)-33-33-40.2×41/21
out-6)住民税2:0.365=43.8×0.1/12(定年後1年6ヶ月から)
 所得額 240-(240×0.3+18)-33-33-40.2

毎月の手取り金額=[毎月の収入]-[毎月の支出]
=[20+1+3.15]-[0.084+0.147+1.909+1.21+0.1048+1.496]
=19.20万円(定年後1年5ヶ月まで)
=[20+1+3.15]-[0.084+0.147+1.909+1.21+0.1048+0.365]
=20.33万円(定年後1年6ヶ月から)

厚生年金などの保険料は3ヶ月平均で1年間変更が発生しないのではなく給与体系が大幅に変わると反映されます。しかし住民税は後払いなのでなかなか減りません。つまり、住民税が特に負担となる可能性が高くなります。

給与の貰い方には、この例のように年収の12等分と、年収は同じでも年2回の賞与と残りを12等分する方法がありますが、後者だと高齢者雇用継続基本給付金は少なくなります。

高年齢雇用継続基本給付金


定年後、継続して働く場合、標準報酬月額が下がった割合に応じて補助金が雇用保険から支給されます。この支給金には税金はかかりません。

  給付金額=現在の標準報酬月額×支給率
ただし、上限があり 標準報酬月額(1+支給率) は 34000円以下で、超える分は支給されません。

低下率   支給率
73.00%  1.79%
72.00%  2.72%
71.00%  3.68%
70.00%  4.67%
69.00%  5.68%
68.00%  6.73%
67.00%  7.80%
66.00%  8.91%
65.00% 10.05%
64.00% 11.23%
63.00% 12.45%
62.00% 13.70%
61%以下 15.00%

特別支給の老齢厚生年金


老齢厚生年金にある「報酬比例部分」、60歳代前半に支給されている特別支給の老齢厚生年金は、段階的に支給開始年齢が引き上げられています。平成24年度現在は、下図(※)のように60歳から報酬比例部分、65歳から老齢厚生年金と老齢基礎年金が支給されています(男性)。


年金減額


総報酬月額相当額+年金月額-28万円)÷2=年金支給停止
(給与と年金が28万円以内であれば年金は支給停止にならない)
額総報酬月額相当額=標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額の総額÷12

また、高年齢雇用継続給付金を受けてると支給率にあわせて年金が減額されます。
賃金割合 高年齢雇用(%) 年金支給停止率(%)
73.00% 1.79 0.72
72.00% 2.72 1.09
71.00% 3.68 1.47
70.00% 4.67 1.87
69.00% 5.68 2.27
68.00% 6.73 2.69
67.00% 7.8 3.12
66.00% 8.91 3.56
65.00% 10.05 4.02
64.00% 11.23 4.49
63.00% 12.45 4.98
62.00% 13.7 5.48
61%以下 15 6





雇用保険料


一般の事業 労働者負担 0.4% (事業主負担 0.7%)

介護保険料


健康保険に加入している場合、企業によって異なり、標準報酬月額によって算定し、給与天引きとなります。事業主も被保険者と折半し負担することになります。 
例) 標準月額報酬額×7/1000 労働者負担

厚生年金保険料率(折半)


標準報酬(給与の平均額)×厚生年金保険料率=厚生年金保険料
平成27年9月 17.828
平成28年9月 18.182
平成29年9月以降 18.3で固定化予定

健康保険率


全国健康保険協会(中小企業中心の団体、)→ 会社によって異なる
介護保険第2号被保険者(第2号被保険者は40歳以上64歳以下の方)に該当する場合
11.54%(折半)

所得税


所得税額=課税総所得額×税率-控除額
課税総所得額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
18,000,000 円以上 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

年収ごとの給与所得控除額は
65万円まで 全額
180万円まで 収入 x 40%
360万円まで 収入 x 30% + 18万円
660万円まで 収入 x 20% + 54万円
1000万円まで 収入 x 10% + 120万円
1500万円まで 収入 x 5% + 170万円
1500万円以上 245万円
例)300万円 x 30% +  18万円 = 108万円

所得税の基礎控除は38万円
配偶者控除は38万円配偶者の合計所得金額
社会保険料控除

配偶者特別控除の控除額
・103万円超~105万円未満:38万
・105万円以上~110万円未満:36万
・110万円以上~115万円未満:31万
・115万円以上~120万円未満:26万
・120万円以上~125万円未満:21万
・125万円以上~130万円未満:16万
・130万円以上~135万円未満:11万
・135万円以上~140万円未満:6万
・140万円以上~141万円未満:3万

住民税


住民税の基礎控除は所得税より5万円少ない33万円
住民税の配偶者控除は33万円
・103万円超~110万円未満:33万円
・110万円以上~115万円未満:31万円
・115万円以上~120万円未満:26万円
・120万円以上~125万円未満:21万円
・125万円以上~130万円未満:16万円
・130万円以上~135万円未満:11万円
・135万円以上~140万円未満:6万円
・140万円以上~141万円未満:3万円
・141万円以上:0円

住民税と所得税では控除額が微妙に異なる

その他、年金に関わるトピックス


1)標準報酬月額の3ヵ月平均平均
厚生年金の基準になる4,5,6月に働き過ぎると保険料が上がって損する気がしますが、将来の年金に反映されるので一概に損とは言えません。

老齢厚生年金
老齢厚生年金(報酬比例部分)が増加します。
例:60歳から65歳までの5年間(60月)の標準報酬月額を300,000円とした場合は
300,000×5.769/1,000×60月×1.031×物価スライド率なし=107,000円
老齢厚生年金の年額増加が、概略の計算額です。

2)老齢厚生年金の経過的加算
60歳以降に厚生年金保険料を払っても老齢基礎年金は60歳までなので額の計算には含まれません。その代わり、老齢厚生年金の経過的加算として、「60歳以降の国民年金第2号被保険者期間を、保険料納付済期間として計算した場合の老齢基礎年金に相当する額(のようなもの)」が支給されますが、経過的加算の上限は厚生年金の被保険者期間が480月(40年)になるまでです。

3)年金の税金
給与と年金は別々に所得を計算します。

[給与所得+年金の雑所得-所得控除]×税率

年金の雑所得=年金収入-控除額(最低70万円)

65歳未満の人
公的年金等(A)の公的年金等控除額
130 万円未満 70万円
130 万円以上 410 万円未満 (A)× 25 % + 37.5 万円
410 万円以上 770 万円未満 (A)× 15 % + 78.5 万円
770 万円以上 (A)× 5 % + 155.5 万円