DRMとはDABとHD Radioの弱点を改良したデジタルラジオ




一般的にDRM(Digital Rights Management)と言えばデジタル著作権管理を思い浮かべる人が多いけど、放送関連のエンジニアは「Digital Radio Mondiale」を指します。

この『DRM』はデジタルラジオはDABやHD Radioなどより後でまとめられたシステムなのですでに始まっているデジタルラジオシステムの弱点(欠点?)を巧みに改善したシステムになっています。

例えば、DABはFM放送局のデジタル化を考えていたので、AM放送局は置き去りになったり、DAB用に新しい放送バンド(Band3)が必要になったり、サイマル放送でアナログ放送とデジタル放送間をリンクするときに2個の受信機が必要になったり、アンテナも新規に必要だったり、意外とコストアップになります。

一方、HD RadioはコストアップはDABほどではないのですが、既存の放送帯で送信するため、隣接妨害を与える確率が高くなり、デジタル放送エリアが狭くなるにも関わらず送信電力を抑えたり、隣接妨害を受ける確率を低くするために上側と下側に同じ放送を送信してどちらかで受信できるようにしています。つまり意外と効率が良くないシステムになっています。




そこで登場したのがDRMとそれの拡張版DRM+です。DABとDAB+と名称の付け方は似ていますが意味は全然違います。

DABとDAB+はAudio Codingが変更されただけで、Channel Codingの物理的なシステムは変更されていません。

しかし、DRMとDRM+はChannel Coding自体も変わっています。もともとDRMは30MHzの放送に対応して、それ以上はDABというコンセプトでした。しかしDABではFM帯(Band2)は使わないでその上の周波数(Band3)で放送が始まりました。

HD Radionの普及度合いを見てシステムを拡張してFM帯でもDRMが使えるようにFM帯で使用できるようにDRM+を追加しました。




DRM、DRM+ではアナログ放送とサイマル放送をする場合には隣接した周波数帯にDRM放送を行うようになっていますが、HD Radioと異なり、上下帯ではなくて、上か下か片方の帯域だけでDRMを放送します。

なぜ片方だけで大丈夫かというと、妨害のない方だけにDRM放送を設定するように運用するからです。

HD Radioも一時、南米で本放送を検討するときに片側だけで放送する検討をしていたようですが、北アメリカだけで市場が十分大きいため、改良は諦めてしまいました。

このようにシステム的には進んでいるのですが、実際の市場は思ったほど立ち上がっていません。これからはデジタル放送とインタネット放送との競争と共存がキーワードになりそうですね。