米国で息を吹き返した地上デジタルラジオのHD Radio


米国でもデジタルラジオが検討されだしたころは地上波で放送がメインでしたが、方式検討がなかなか進まないと、衛星デジタルラジオ(SDARS Satellite Digital Audio Radio Service)が一気に開花し市場を作ってしまいました。




しかし、地上波デジタルラジオもギブアップアしていませんでした。『IBOC(In Band On Channel)』方式に統一されて、ここから地上波の逆襲が始まりました。

IBOCシステムをHD Radio社がSDARSと優位性を出すために取った戦略は

①HD Radio放送は基本は無料放送。

②車載用でもアンテナも従来のAM/FMアンテナを共用できる。

③既存の放送局はそのまま、放送を継続できるビジネスモデルが可能。

④受信機の製品コストはSDARSに比べて安価にできる。




放送内容は従来ラジオのサイマル放送、つまりDABの初期と同様なやり方でしたが、

①HD Radio受信機は新規アンテナが不要。

②受信機もDAB受信機よりは安価になる。

③デジタル放送はメインは現行と同じにして、サブ放送では異なる放送を可能にした。

④交通情報データは地元放送局のネットワークを使うので、きめ細かい街中データが使用可能になっている。


結果的に衛星デジタルラジオ会社(当時2社)とHD Radio社とではなくて地上放送局(数千局)との争いになってきました。地上波でDABを採用しなかったのは、DAB用周波数がまだ、空いていなかったことと、自分で開発したシステムだと特許料が収入として得られるのでビジネス的には成功しやすかったのだと思います。





HD Radioは従来のラジオとの親和性が良く、やはり無料というのは魅力で現在はSDARSを超えて普及しています。

受信器メーカーからみると、世界的にはDAB市場が大きいのでAM/FM/DAB対応システムを設計したい。そこでDAB対応しておけば、HD RadioはDABの信号処理部分のソフトウェアだけ変更すれば対応できるのでワールドワード対応が楽というメリットがあります。