日本発FM多重DARCは悲しいことに日本ではほとんど知られていない




今回は日本初FM多重放送のお話です。元々はヨーロッパのRDSの普及に影響されて、もっと転送レートの多いデータ放送を開発しようと日本独自の方式を考えたのが始まりのようです。Digital Radio Channel(DARC)と呼ばれ、一般には「見えるラジオ」として放送が開始されました。

規格はARIBから有料で入手できますが、世界規格として提案しているので『EN 300751』として公開されています。

共存を含め、RDSをかなり意識しているため

   RDS  57KHz 1.1875KHz
   DARC 76KHz 16KHz

RDSは文字中心なので、DARCは文字+画像も送れるシステムにしたかったようです。システム自体はNHKが開発し、最初のデコーダICはNHKと協業でシャープが設計しました。

多くのRDSの基本特許等はUKのBBCが大体持っています。目的は無料で技術公開してシステムを普及させるためだとBBCは言ってました。

DARCはと言うとNHKエンジニアリ ングシステムが基本特許を保持し、DARC製品によっては作る時には契約を結ぶ必要があります。

BBCは基本無料、NHKは無料ではなさそう。同じ公共放送でも放送に対するスタンスがかなり違いますね~~~。

新しい放送システムが上手く発展するかどうかは放送局だけでなく、受信機を作るメーカーも同時に製品を出さないと上手くいきません。




見えるラジオに関しては残念ながら世の中に認知されなくて自然消滅してしまいました。RDSは成功して、性能的には高機能なDARCが失敗した理由はたぶん、3つあると思います。

①高性能のためシステムが複雑で部品代などが高価でコストアップになってしまった。
②当時としては、どんなサービスでもある程度、対応可能とうたっていましたが市場が要望するキラーコンテンツがなかった。
③RDSより開発が遅かっため、デジタルラジオなどの影響で中途半端なシステムになってしまった。

RDSを見ていると、

①IC開発も特許がフリーなので簡単にラジオICに内蔵できるし、信号処理もマイコンで可能だったのでほとんどコストアップしなかった。
②交通情報割込み、局名表示、自動ネットワーク追従と絞ったのでユーザーがメリットを体感できた。
③市場導入が早かったのでデジタル放送の影響を全く受けなかった。


新しいシステムを開発するには開発タイミングと市場要望を上手く考えないと、例え技術が優れていても普及しないという例ではないでしょうか。



では、DARCは完全に失敗したかというと、実は交通情報という分野で細々と一定のシェアは確保しています。日本ではVICSとしてFM多重で交通情報を流していますし、ヨーロッパではSWIFT、タイではRTICとして運用されています。

今後はFM放送自体がどうなるかわかりませんが、周波数的にRDS2とバッティングするのは問題でしょうね。